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「あの……四ツ谷部長。この前の……」
「ああ、笹川課長。あの件でしょう? ちょっと奥の部屋を使って話しましょうか?」
課長は仕事は出来るが、気が少し弱い。僕よりもずっと部下からは慕われてるから、うまく話を聞いて頑張ってもらわないと。
彼の話が終わり今度は自分の仕事を始めようとすると、スマホに父からのメッセージ。
今夜取引先との会食があるからお前も来い……ね。
これから先僕がトップに立った時のために、その言葉だけで彼は僕を思い通りに扱ってきた。きっとこれからもそうなのだろう。
僕は父にとってただ扱いやすいだけの人形。僕の人生でこれまでに僕の意思が尊重されたことなど無いのだから。
「わかりました」とだけ返事を返して今度こそPCのメールから確認していく。社内メールや部下の取引先との内容を確認したり。
新しい営業先を誰に任せていくか、また課長と話し合わなければいけないな。
アレコレと考え事をしながら、やっていくことをメモ。片付けられることから順番に、どんどんやっていかなければ周りに能無しだと囁かれる。
僕は何のためにここで働いているのか。ただ顔面に笑顔を張り付けて、時間をかけて自分の中身をどんどん腐らせていくだけだった。
————————彼女と出会うまでは。
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