操り人形の僕と意思を持つ日本人形の君

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操り人形の僕と意思を持つ日本人形の君

「貴方はそんなに無理をして、笑わなくても良いのでは?」  ————凛とした姿と口調の彼女は、あの人に似てる。  それがあの新入社員の無表情女子に持った僕の正直な感想だった。     ******** 「部長、おはようございます」 「ああ、おはよう。今週も頑張ってね」  まだ二十代前半の若い社員が元気に挨拶してくる。  僕は今呼ばれた通りこの会社で部長という役職についている。  僕はニコニコと明るい笑顔で僕を追い抜いて歩いていく数名の社員と挨拶を交わす。  それなりに大きな会社である、この職場での部長と言う立場……この役職は僕の能力を認められてのものではない。  ただこの会社の社長が僕の父……僕はその後継ぎ。それだけの理由だ。  部下に任せた朝礼を軽く聞き流して自分のデスクに戻る。  確かに僕はお飾りみたいな存在だとは思っているが、自分の能力がそれほど低いとは思っていない。  両親に望まれた高校、そして大学へ進み成績も決して悪い方ではなかった。  社会人になった今も与えられた仕事はキッチリこなすようにしているし、部下の悩み事相談にも応えるようにしてる。  それでも僕は「親の存在で部長なれただけの能無し」そんな言葉を平気で裏で囁かれている事も知っている。  僕が望んで座った椅子ではなくてもやっかみはいくらでも付いてくる。
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