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はのようせい
「おかーさーん!!!」
ベッドから飛び起きたみちるが、興奮してキッチンへと走っていく。
「おはよう、みちるちゃん」
母が駆け寄ってきたみちるの頭を優しく撫でる。
「見て!! おかね!!!」
昨晩、みちるの歯が初めて抜けた。
「お父さん、はが…」
グラグラする歯をいじったらポロリと取れた。痛みはないものの、歯についた血が何となく怖い。
「みちるの歯が大人になろうとしてるんだね。寝る前に枕の下に歯を入れておくといい」
不安そうな顔をしているみちるに、父は微笑みながらアドバイスした。
「なんで?」
「良い歯が生えてくるおまじない。そして子どもの歯は、寝ている間に妖精さんがコインと交換してくれるからね」
「本当にー!? やったあ」
みちるはワクワクしながら枕の下に抜けた歯を入れた。妖精さんが取りやすいように、なるべく枕の端に寄せて。
そして今、みちるの手に握られていたのはコインではなく、一万円札であった。
(お父さん…娘に甘すぎじゃないのかしら)
母は唖然とし、夫が帰宅したら話をしておかないと、と思った。
「わ、すごいじゃん! 最近の妖精さんて太っ腹ぁ!」
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