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おじさんは言いにくそうに答える。
「じゃあなんで…!?」
みちるはまた泣きそうだ。
「歯の妖精は、世界中の子供たちの歯を集め妖精の通貨に替えています。そのお金で皆さんに贈る銀のコインを買い、残りで生計を立てるんです。でも、最近では子供の数が減り、手に入る歯も以前とは比べ物にならないくらい減りました」
「保険屋さんの営業みたいな話ね」
望は保険会社で働く友人から、契約のお礼に自腹で買ったノベルティを渡している、と聞いたのを思い出した。
「我が家には12人の子どもがおりまして。一番下は最近生まれたばかりで、奥さんも働けず、生活が苦しい状況にあります。一晩中働いてもわずかな収入で、お礼を満足に買うことができない…担当させて頂いているのに本当に申し訳ないと思っています」
おじさんは深々とみちるに薄い頭を下げた。
「そうだったんだ…おじさん……私こそ、怒ってごめんね」
「おじさん、あたしやるよ」
望が何かを決意した。
「残りの親知らず、全部抜きします」
「ええっ! それはかなりの大仕事ですよ! しばらくまともな食事ができないかもしれない」
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