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「いいんです。いずれは抜くことになるかもって、今日歯医者で言われたし。子どもの綺麗な歯じゃないから大した金額にはならないだろうけど、少しでも足しにしてください」
「そんな…」
「おねえちゃん…! じゃあ、私もお礼、要りません!」
「ええっ、みちるちゃんまで! お礼無しは歯の妖精のポリシーに反します」
おじさんは恐縮し、胸を熱くした。同時に血圧が上がった。
「そっか…じゃあ、おじさんたちが元気なこと教えてくれればいいよ」
「みちるちゃん…」
そのあとおじさんは泣きながら、汚い親知らずと、歯の根っこを抱えて消えた。
改めて、あんなのお金にならないんじゃないか、とみちるは思った。
「少子化の影響がこんなところにも出るなんてね」
望がしみじみと語るが、人の役に立てたのが嬉しいのか、満足気である。
「お姉ちゃん、私やってみたいことがある」
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