はのようせい

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「歯学部の友達がいて良かったあ。やっぱ理解あるね、あの人ら」 「クラファン、順調だよ」 姉が大学の友人や教授に相談し、貧しい国の子どもたちに口腔指導を行うプロジェクトを発足させた。資金はクラウドファウンディングで集めている。目標金額まで、あと少しだ。 ーキレイな歯が集まるといいね、妖精さん。 あれから何本も歯が抜け、枕元にはお札の代わりに小さな手紙が置かれるようになった。字も小さいしわからない言語で書いてはあるが、多分皆元気なんだろうなあ、とみちるは最後に見たおじさんの号泣顔を思い出してふふっと笑った。 「ママー! 見てーーー!!」 喜びの声を上げ、2階から降りてくるのが分かる。洗濯物を広げる手を止め、テラスから家の中に戻った。 「見てえ、ママの言うこと当たった!!」 息子が両手のひらを広げ、突き出す。 そこには小さな銀色のコインと、コインよりも、もっと小さな手紙がちょこんと、あった。
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