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スウェット姿で部屋から出てきた姉の望が言う。
「ん? ちょっと貸してみ」
そう言うとみちるの手からお札をとり、リビングの窓から射す朝日に照らす。
「これ……ニセ札じゃん!」
「ええーーっ!!? 本物のお金じゃないってこと!?」
みちるはショックを受けた。
(なあんだ、オモチャのお金ね)
きっとお札の柄がプリントされたメモ帳か何かだろう。母は安堵し、フライパンの中で食べ頃になっているハムエッグを皿に移した。
「待ってて」
望は部屋から平べったいクッキーの空き缶を持ってくる。
「10年以上開けてないけど、多分こん中にあったと…よいしょっ」
しばらく開けていない缶の蓋は錆びついている。力を込めて開けると、曲がったクリップや大吉のおみくじ、小さくなった消しゴムなどが入っている。その中にキリンやライオンなどの動物、綺麗な女の人の横顔、草花やユニコーンと星のコインが何枚も混ざっているのを、みちるはすぐに見つけた。
「わあ〜可愛い……いいなあ、私もこう言うのがよかったな」
「なんでだろね? しかもニセ札ってのがウケる」
「そういえば望、あなた歯医者から検診のお知らせ来てたわよー」
キッチンから母が顔を出す。
「見た見た。そのうち授業ない日にでも行ってくるわ。妖精さんのコインのおかげで生えてきた永久歯、大事にしないとねー」
そう笑いながら言い残し、姉はトイレへ消えていく。
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