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「えっ、私の歯、安うっ!」
「金額じゃないでしょうが。海外で活躍するような大きな人間になれって、見えざるものからのメッセージを素直に受け取りなさいよ」
望はなぜこのロマンが理解できないのかという表情でみちるを見る。
みちるはなんとなく思った。
私のところに来る妖精さんは、ケチンボなのでは…
その日の夕方、望が暗い表情で帰宅した。
「なかなか抜けなくてさあ、最後は先生に馬乗りになられたわ…」
「下の親知らずってかなり痛いっていうわよね。痛みはどうなの」
「まだ麻酔が聞いてるから大丈夫。痛み止めと抗生剤もらってきた」
「しばらくおかゆとか、柔らかいものにするわね」
心配そうに母が声をかけている。親知らずが虫歯になっていた望は、本日抜歯を行ったのだった。
「みちる」
望がソファでテレビを見ているみちるに声をかけた。みちるはまだ不貞腐れている。
「あたし、妖精さん捕まえるから。そんで今までの分のコイン、請求しましょ」
「えっ」
姉はそう言い、透明のぽち袋に入った歯を見せる。
「あんたの枕元に置いてみて。あたしが隣で寝てるふりして捕まえるから」
「なるほど」
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