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歯の端っこは黒ずんでいて、折れた歯の根っこも一緒になって袋に入っている。大人の歯ってこんなに大きいんだなあ、でもこんなに汚い歯を妖精さんは持っていくのかなあ。みちるは思った。
みちるのベッドの傍に望の布団を敷き、ベッド横のサイドテーブルに歯をセットする。
(なんか汚いから下にティッシュひいとこ)
直に歯に触らないよう、袋を逆さまにして歯を外に出すみちるであった。
「お姉ちゃん、妖精さんのこと捕まえたらあんた起こすから。電気消すよ」
「わかった」
電気が消され、みちるは目を閉じた。
ー妖精さんてどんなだろう。
ーもし会えたら、何を聞こう。
ーどこからきたの。
ー持っていった歯はどうするんですか?
ーあとはやっぱり、なんで私へのプレゼントだけ、微妙なんですか…
色々と考えてしまうと、なかなか眠れない。しばらくすると隣でいびきが聞こえる。
(寝てんじゃん!)
望は就寝前に飲んだ痛み止めの副作用でぐっすりであった。
姉の様子を窺おうと、みちるはそっと薄目を開ける。
その時、視界にぼんやりとした灯りが映った。
(…!!)
灯りは左右をふわふわとして、次第に視界から消えていく。
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