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「…あんた、これ大人の歯だよ。しかも虫歯になった親知らず。そんなんでも集めてんの?」
「……はい。自分が担当した子の歯なら、大人の歯でも良いんです」
おじさんは観念して答えている。
「てことはあんた、あたしが子どもの時にも来てたってこと!?」
「…はい」
「まじ!? あたしのこと覚えてますか!?」
望は急に恩師に会ったような口調になり、ヘルメットを持ち上げる。おじさんは中で正座していた。
「はい。覚えてますよ。ラムネについてるおまけの指輪を集めるのが好きで、いつもお母さんに買って貰ってた望ちゃん」
「わあ、懐かしいなあ。今でも貰ったコイン、取ってあるんですよ!」
「それは光栄です」
おじさんは少し照れたように正座をしたまま会釈した。
「妖精さんにあげるんだから綺麗な歯にしないとって、一生懸命歯磨きしたなあ〜」
「ちょっとおねえちゃん! 私のコイン貰うんじゃなかったの!」
急におじさん寄りになった姉をみちるが嗜める。
「そうだった」
「おじさん! 何で私には安いものばっかりなの? 私の歯には価値がないんですか!?」
「……違う。君のはとってもきれいな乳歯で、値打ちがあります」
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