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清美さんから送られてきた動画を見た日から3日後、九州から帰ってくる進藤さんと『Moderato』で待ち合わせをした。
私は約束の時間よりかなり早く行ったのだけど、何と進藤さんの方が先に来ていた。
カウンターに座ってアツシさんと話をしている。
スツールからはみ出す長い脚もフェロモンダダ漏れの憂い顔もいつも通り健在だ。
いつ見ても素敵な大人の男性。
「進藤さん」
そっと声をかけると驚いたように振り向いてそれから口角を少しだけ持ち上げて「早かったな」と笑う。
「はい。久しぶりに会えると思って嬉しくて急いじゃいました」
ふふっと笑顔で答えると進藤さんは一瞬、おっ?と驚いたような表情をした後、すぐに穏やかな笑顔に変わった。
「アツシさん、こんばんは」
笑顔で頭を下げるとアツシさんも「久しぶり。姫が早く来てくれてよかった」とアツシさんからも笑顔を返されてホッとする。
どうやら二人の会話の邪魔をしたわけじゃないみたいだ。
アツシさんまで私のことを『姫』と呼ぶのは納得いかないけど、まあそこは今日は流しておこう。
だって、今私にとって大事なのは進藤さんなのだから。
進藤さんは立ち上がり私の腰に軽く触れ、「行こうか」と2人でいつもの窓側の席に誘導するように歩き出した。
「お帰りなさい。会いたかったです」
「珍しいな。果菜がそんなこと言うなんて。明日はやりでも降ってきそうだ」
エスコートしながら私の耳元に口を寄せて囁く。
私の言葉を信じていないのだろう、からかうような口調だ。
「そうかもしれませんね」
くすっと笑って進藤さんの肩に甘えるように頭をのせるように寄せると、進藤さんは心底驚いたようでピタッと立ち止まる。
「果菜、本当に何かあった?」
心配そうに顔をのぞき込まれる。
「何にもないですよ」
ニコッと笑って「座りませんか」といつもの席に視線を向けると、進藤さんは私の表情を確認して「そうだな」とまた歩き出した。
本当は何もないわけじゃない。
私の中で大きな意識改革があった。
侵入者騒ぎで気が付いた私の我慢していた気持ち。
自分に注目が集まり、自分の知らないところで暴露されるプライベート。
今までそれら全て見ないふりをしていただけだったこと。
進藤さんに理解されていないと思ったこと。
今はそれら全てがどうでもなく思えるくらい進藤さんが愛しくて、進藤さんと一緒にいたいと思うこと。
そして、それを進藤さんに伝えたいと思っていること。
私には進藤さんが九州に行っている間に考える時間があった。
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