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シーン10 二日酔いの朝
次の日、目を開けると
いつもとは違う天井がそこにあった。
けれど、その天井は見覚えがあって、
隣から聴こえる寝息に目をやると、
すぐるがベッドで寝ていた。
昨日の夜のことを、あまり覚えていない。
どうやら前後不覚になった僕を、すぐるが
自分の家に連れて帰ってきてくれたようだ。
頭痛がする。
痛む頭を抱えて大きくため息をつく。
階下からは、すぐるの家族の話し声がする。
ベッド横の目覚まし時計を見ると、もう10時を回っている。
昨日、あれからどうしたんだろう。
かおる子は、どうしたんだろう。
不甲斐ない僕のことをどう思ったんだろう。
言い訳もできない僕をどう思ったんだろう。
開き直ることもできない僕をどう思ったんだろう。
彼女の顔を見ることもできない僕をどう思ったんだろう。
痛む頭を抱えながら、暗がりの先のかおる子の表情を
必死で思い出そうとする。
そうすればするほどに、彼女との淡い思い出ばかりが浮かんで、
涙が滲みそうになる。
僕は、きっと、このままフラれるんだろう。
鞄から、かすかな携帯電話の震える音が聴こえる。
無気力のまま、鞄をひきよせ、画面を見ると、
かおる子の名前と、彼女の横顔。
かおる子から電話がかかってくることはないに等しい。
迷っていると、電話は途切れた。
画面には「着信3件」とある。
ロックを解除して見てみると、
それは全部かおる子だった。
「うそだろ…」
思わず漏れる声。
かおる子が続けて3回も電話をかけてきたことに
驚きと、少し喜んでしまっている僕がいる。
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