File60 不機嫌

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File60 不機嫌

 次の日。  レジェンド帝国内、とある町。 今日はロードと共に町の視察だ。 もう両サイドには人が集まっていた。 視線も何もかもが鬱陶しい。 気持ち悪い。 俺が嫌悪するものだ。  夜。  パレードも視察も一段落して、ロードと共に城内を散歩していた。 「竜。何を買った。見せてみろ。」 とロードが聞いてくる。 「何ってこれだが……。」 と言って透明なバラを一輪取り出す。  別名「クリスタルローズ」  クオーレ鉱石の一種で植物のように育つ宝石の花だ。  色も様々で帝国の国産品だ。 「こういうのは見飽きているんじゃないのか。」 と言うと、ロードは 「知る必要はない。それで誰に渡す。」 と続けた。 「俺の愛する人たちにな。」 と言う。 「………。」 と不機嫌になるロード。  よくわからないが気に入らなかったようだ。 「言いたいことがあるなら言ったらどうだ?」 「俺にも渡せ。」と言い出すロード。 「ああ。構わない。自分用にも買っておいたからな。」 と言って新しいクリスタルローズを渡す。 「俺が欲しいのはそれじゃない。そっちだ。」 と言って俺の持っていた最初のクリスタルローズを見た。 「素直じゃないな。どうぞ。」 と渡した。
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