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森嶋 幹人
ああ、面倒くさい。
女なんて嫌いだ、糞食らえ。
顔がいいやつには蠅のように群がり、そうでもない奴には冷たく接する。性格なんてこれっぽちも気にしない。
インスタにあげたいから彼氏のふりして、なんて言われた時は、本気で殺してやろうかと思った。
その点男はいい。別にオレはゲイって訳じゃないけど、男といた方が気楽だ。
いちいちきゃあきゃあ言わないし、喧嘩になってもぴーぴー泣かない。
その日も、卒業式だっていうのに、女だかりがすごかった。
表面上ではニコニコと接したが、正直早くいなくならねぇかなと思った。
オレには会いに行きたい人がいるんだ。
何とか抜け出し、廊下を歩いていると、同期の笠木とスガさんが抱きしめ合っているのを見てしまった。
オレは何となく、柱の影に隠れる。
なんだ、あの人らそういう関係だったのか?
家族と見ていたテレビでラブシーンが流れた時のような気恥ずかしさが全身を這う。
実を言うと、オレは物凄くスガさんを尊敬していた。会いに行きたい人も、彼だった。
ストーカーみたいだから言わないけど、うちの地区の剣道界では有名選手だった彼を追いかけ、この学校へ来たくらいだ。
贔屓ってほどじゃないけど、確実に他のどの先輩より懐いてた。
会った時には必ず手を振ったし、オレがまめに誕生日を祝うのも彼だけだ。
スガさんは大好きな先輩であり、追いつきたい憧れの人なのだ。
その時オレは何だか、その尊敬を打ち砕かれたような、新しく先輩について知れて嬉しいような、でも少し寂しいような、不思議な気持ちがした。
LGBTは悪い事じゃないとは思う。
ただオレはそうではない。
けれど、菅田先輩の1番は、自分でありたかったと矛盾して思うのだ。
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