〈  はじまり  〉

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「彼とつきあっちゃえばいいのに」   仲良しの高ちゃんに一週間も前に言われたことだ、まだ進展してない。返事は保留中。 「せっかく告白されたのに、もったいないでしょ、大学に入って勉強とバイトだけなんてそれって楽しい?」 「わかんない、楽しいとは思わないけど」 「だったらさ、嫌ならすぐ別れちゃえばいいんだから」 「まあね、気は乗らないけど」  好みのタイプでもないし。 「普通なんだよね、せんぶが」 「何それ? 普通はダメ?」 「そんなわけじゃないけどさ、何かすぐ飽きちゃいそうだし、まわりとおんなじことしか望んでなさそう」 「それでもいいじゃん、ひとりよりは、楽しませてもらいなよ、告白するほど好きなんだろうし」 「それはそうだけど」  高ちゃんに言われてその気にはなったものの、やっぱりためらってる、何かが乗らない、こういうことも勢いなんだろうか、だけど恋愛に向くパワーがないらしい、ほんとに好きな相手じゃないと全開にならない、やっぱりまだ気持ちが向かない。  本気のパラメーターが作動しない、まるで燃え尽きたみたいに。  恋愛なんて無理にするものじゃない、どっちか片方だけがポリテージーが上がってもそのバランスはすぐに壊れちゃう気がする。  だから、まだはじまらない、誰の事も選べない、だけどあのお店で竜子さんやオーナーやみんなに囲まれている自分がいい、恋とかそんなの関係なく笑っている自分が今はいい。たまにジョークを言い合って笑ったりしている、そんな自分がいい。   本当の本気の相手に巡り会うまではあそこにいる自分がお気に入りでいい! それが最高って今は素直にいえるから。    
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