12. ゴーストの叫び

19/63
85人が本棚に入れています
本棚に追加
/803ページ
「そんなにひどいのか?」 『舌筆に尽くしがたいほどです。私は同志(フレンド)を救えませんでした』 「……」  同志(フレンド)。ディザイアの血の気が引いた。  研究室内へ小走りに入るとすぐ目に飛び込んでくるのは、巨大な作業台だ。ロボットを組み立てるため、もしくは解体するための部品を全て置けるような、ビリヤード台を二台並べて広げたほどの大きさのものである。  フィンセントはそこに突っ伏していた。寝ているのか、うなだれているだけなのか、ディザイアにはどちらでもよかった。  彼にとっては、作業台の上に並べているの方がよほど心をえぐった。吐き気と、怒りと、悼みが同時に訪れた。  それらは成れの果てであった。  かつてアダムとイヴと呼ばれていたロボットたちだった。  一切の部品がバラバラにされており、彼らの電子回路はどこにも見当たらなかった。 「フィン……!」  気づけばフィンセントの顔が目の前にあった。自分が一体何をしたのか一瞬わからなかった。手元を見ると、フィンの服の襟を締め上げていた。  立ち上がらされたフィンセントは、それでも疲れた半目でディザイアを虚ろに見ていた。
/803ページ

最初のコメントを投稿しよう!