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いよいよ、ダービー当日だ。
本来なら僕は競馬仲間達と、競馬場現地で一緒にワイワイしながらこの華やかな『ダービーデー』を楽しむ筈だった。
しかし、外は新型ウイルス感染拡大対策に無観客開催だ。
僕は自前に買っておいた缶ビール片手に、テレビでの競馬中継を観ながらネット馬券を買って雰囲気だけを満喫しようとした。
無論、競馬仲間とはスマホのチャットで会話をしながら。
・・・外はこんなに雲ひとつない快晴なのに・・・ダービー日和なのに・・・新型ウイルスのせいで・・・悔しいな・・・
・・・僕の応援するスペースシップが、この晴れ舞台の姿をパドックで見たかったよ・・・
やがて、テレビ中継はダービーのパドックを映し出していた。
・・・自分の単勝買いのスペースシップ・・・
・・・やっぱりダービーだから緊張してるのかな・・・?
・・・厩務員2人挽きでもこんなに入れ込んで・・・
・・・君の居る競馬場から、この僕の部屋へは遠く離れてるけど、ここから応援してるよ・・・!!
・・・頑張れスペースシップ・・・!!
「いよいよだね。」
「あー!ワクワクが止まらない!!」
「今年のダービーはどんなドラマが?」
「馬券が当たりますように!!」
スマホのチャットに、競馬仲間のコメントが並ぶ。
今人けの無い静かなスタンドをバックに、ダービーという一生に一度の栄光を目指す精鋭達が、機首を背に本馬場を返し馬を行っているのを、テレビ中継で写し出していた。
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
ファンファーレが鳴り響き、スマホのチャットの競馬仲間も「おー!!」と盛り上がっていた。
ガシャッ!!
ゲートが開いた。
ドドドドドドドドドドドドドドドド・・・
「あれ?あいつのスペースシップ置いていかれるよ!?」
「スペースシップ、お話にならないじゃん。」
「スペースシップどんどん離されてるじゃん?!」
他馬のペースについて行けずに断トツの殿の位置のスペースシップに反応した競馬仲間のチャットに、僕は、
「まだまだ!そのうちまたごぼう抜きすっから!」
と、前向きに答えた。
そう、競馬には絶対は無い。
僕の応援している、スペースシップのあの新馬戦の再現がこのダービーに起きて・・・
あれ?最後の直線・・・
どんどん離されてる・・・
結局、スペースシップは断トツの最下位でダービーのゴールを駆け抜けた。
「あれ?ショック・・・だった?」
「大丈夫?」
「やっぱりこのメンバーじゃ格下だったんじゃね?」
テレビの前で茫然自失の僕に、チャットの競馬仲間が呼び掛けてきた。
「だ、大丈夫だよ。馬券は外れたけど・・・スペースシップは『これから』の馬だもん。『これから』強くなるよ。」
そうさ、僕が応援しているスペースシップは、『これから』・・・何戦かして、連戦連勝して古馬になって重賞を勝って・・・
その日まで、この忌まわしい新型ウイルスが終息しないかなあ。
まあパドックでスペースシップに逢いたいよ・・・
それまで、遠く離れてたこの家の部屋でスペースシップを応援し続ける事にした。
スペースシップの頑張りで、この試練を乗り越えられそうな気がするんだ。
頑張れ、スペースシップ!
僕も頑張るから・・・
~離れても応援するよ~
~fin~
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