7人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ
1,出会い
アーセナル王国。大陸西部に位置するこの国には、世界最高峰と言われる騎士を養成する学院がある。学院の創立に携わったかつての王の武勇を称え、《剣帝学院》と名付けられたこの学院には、毎年国内外から多くの若者が集まる。下ろし立ての青い学院の制服を身につけ、瞳を輝かせながら辺りを見回す少年、ユイト・カムラギも、そんな若者の一人であった。
「おお、やっぱりでけぇな~」
ユイトの立っている道沿いには美しい庭園が広がり、その奥には一際存在感を放つ建物、剣帝学院の校舎がそびえ立っていた。
(今日からここで、俺は騎士になる第一歩を踏み出すんだ!)
幼い頃より憧れていた、夢の場所。今そこに自分がいることの喜びを噛み締めながら、ユイトは入学式典の行われる講堂へ向かった。
講堂に入ると、既に多くの生徒が席についていた。隣にいる者と話したり、事前に配布された資料に目を通しながら、式が始まるまで皆思い思いに過ごしている。
「さて、どこか空いてる席は……」
「おーい、そこの君!」
後ろから声をかけられ振り返ると、茶髪の天然パーマが目立つ一人の男子生徒が、こちらに手招きしていた。
「俺の隣の席なら空いてるよ」
「お、ありがとう!」
男子生徒の好意に甘え、その生徒の隣の席に座る。
「いや~親切にありがとう!助かったよ。俺の名はユイト。ユイト・カムラギ。君は?」
「俺はジャック・バリオン。よろしくな」
お互いに自己紹介を終え、握手を交わす。すると、ジャックの背中から栗色のポニーテールの少女が顔を覗かせた。
「ジャック、そいつ誰だ?」
「ん?あぁ、席を譲った縁でな。ユイト、こいつはサーシャ。同じ王都の生まれなんだ」
「あたしはサーシャ!サーシャ・ハミス。ユイト……だっけ?よろしくね!」
「あぁ、よろしく!」
ジャックと同様に、サーシャとも握手を交わす。そうこうしている内に、あちこちで拍手の音が響き始めた。
「続きは、式の後でな」
ジャックの言葉に二人は頷き、前を向いて式に集中した。
最初のコメントを投稿しよう!