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昨日まで、ここには花畑があった。
昨日まで、ここには花畑があった。
街外れの林の中にある、小さな空間。
林の木々の葉は、皆一様に落ち、
私の目の前には"昨日まで花畑だったもの"が意味もなく広がっている。
耳に届くのは、『羽音』。
無数の、そんな言葉では表しきれないほどの膨大な羽音の群れ。
羽音の主――黒い虫たちはとっくに花畑ではなくなったこの場所で、
かろうじてまだ残っている草の根元の部分を丁寧に食んでいる。
羽音に交じって、虫たちの咀嚼音が聞こえる気がする。
後ろの林でなにかが落ちる音がした。
振り返った私の視界の隅ですっかり葉の落ちた枝にあの虫たちが喰らいつき、かじっている。
ついに葉っぱだけではなく、枝まで食べ始めたようだ。
枝の芯まで貪りつくし、枝が木から落ちるまでかじり続けている。
本当に節操がない。
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