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告白を断った後、自分のクラスに戻った。すると、一瞬教室中が水を打ったように静かになったが、次の瞬間にはクラスのみんながコソコソと俺の方を見ながら何かを話し始める。
この現象は、俺が初めて眼鏡をかけて登校した日から始まった。一見何かのイジメのようではあるし、俺も最初はそうだと思ったのだが、コソコソと話している奴らの顔をよく見てみると、どうやら違うらしかった。
だって、一部の生徒は頬を赤く染めているから。
それに気付いた時、この現象の理由を察すると同時に背筋に悪寒が走った。
……友人はこの現象のことを『ドキッ!憧れの嫁兼くんがやってきた!話しかけに行きたいけど、そんな勇気ないよ無理〜!現象』と名付けた。
長いし少し気持ち悪いが、まあ分かりやすい名前だと思う。うん…だいぶ気持ち悪いけど…。
ものすごい寒気と少しの気まずさを感じながら自分の席に座ると、隣の席の男が目を輝かせながら話しかけてきた。
「おはよう、嫁兼くん!さっきの後輩くんに呼び出されてたんだよね!?用事何だった?告白だった?付き合った!?」
「気持ち悪いこと言うな、断ったに決まってるだろアホ」
「…あはは、まあ嫁兼くんはそうだよねー、残念」
そう言って苦笑いを浮かべるこの男は真鎖 響平。先程起こった『ドキッ!憧れの(以下略)現象』の名付け親であり、腐男子である。
「あーあ、せっかく俺の目の前で平凡総受けパラダイスが始まりそうなのに、嫁兼くんガード固すぎて始まる前に終わっちゃう感!告白の1つや2つや3つや4つ、即拒否じゃなくてちゃんと考えてあげれば良いのにさー」
「じゃあ、お前は男に告白されてもすぐに拒否することなくちゃんと考えてやるんだな、優しいなー真鎖は」
「いやいや、そんな訳ないでしょ!俺腐男子だよ?丁重に断った上で、あの子は男もイケる口だと心のノートにメモって他の誰かと絡めて妄想しニヤニヤするに決まってるでしょ?」
「……お前…それは即拒否より酷いと思うぞ…。」
「ええ、そう?まあ良いじゃん、どうせ俺みたいな平凡以下のキモい奴を好きになる人なんて居ないだろうし。」
そう言ってニコニコと笑う真鎖に俺は舌打ちをした。
真鎖は世間一般的に顔が整っている方、所謂イケメンという奴なのだが、そんな奴が自分のことを平凡以下だと言っているのを聞くと、嫌味を言っているのかとしか思えない。
…まあ、真鎖との付き合いは去年からで、それなりに人柄も知っているため、別に嫌味とかではなく本気でそう思っているというのは分かるのだが。
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