俺様に目をつけられる話

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「えっ、舌打ち?俺、なんか嫁兼くんの気に触るようなこと言ったかな…?」  真鎖が心配そうな顔をしてそう言った。 「…別に。ただ真鎖がまた馬鹿なこと言ってるなって呆れただけ。」 「そう?なら良いんだけど。…それにしても、嫁兼くん、眼鏡かけてからのモテ具合半端じゃないよね。」 「……不本意ながらそうだな…。」 「俺的には最高にメシウマだから、良いぞどんどん告られろって感じなんだけど!」 「土に還れ変態」 「えっ、傷付いた!罰金100円頂戴!」 「お前が悪い。」 「まあそうかもだけどさぁー……あ、今日の昼、学食で食べても良い?今朝寝坊してお弁当作れなくて…」  真鎖は思い出したようにそう聞いてきた。  実は真鎖の実家は県外にあり、現在は学校から徒歩15分程のアパートに一人暮らしをしている。  いつもは昼は中庭で一緒に弁当を食べることが多いのだが、真鎖が弁当を作りそびれた日は学食で食べている。ちなみに、この学校の学食は弁当持ち込みを許可している。 「いいけど…というか、いっそ毎日学食でも良いんじゃないか?早起きして弁当作るの大変だろ」  俺がそう言うと、真鎖は凄い勢いで首を振り始めた。 「いやいやいや!!無理だよ無理無理!!あんな人が多いところに毎日行くだなんて、絶対に無理!!知らない人とか怖いもん!!!今だって、学食に行くこと考えると動悸すごいし手が震えるし喉がカラカラになるし…うっ、胃も痛くなってきた…」 「…そう言えばお前、人見知り凄かったな…嫌なこと考えさせてすまない。」 「いや、嫁兼くんは謝らないでよ。これは俺のコミュ障が酷すぎるだけで、嫁兼くんのせいじゃないから。」  真鎖は少し青い顔をして腹をおさえながら言った。 「…そんなに学食が怖いなら、コンビニか何処かで買ってきたらどうだ?そうすればいつも通り中庭で食えるし、そんな青い顔になることもないだろ」 「いやそれも無理…!今、通学路にあるコンビニ、店員さんが強面で入れないっ…この間も箸とおしぼり要るかどうか聞かれて上手く答えられなくて舌打ちされたし…」 「それアウトだろ、店員の方が。」 「うん…でも、ちゃんと聞かれたことに答えられなかった俺が悪いし……あっ、それに、学食のおばちゃんは好きなんだ、優しいから。ご飯もコンビニや俺が作るのより何倍も美味しいし。だから、学食は怖くて毎日は嫌だけど、たまになら嬉しいんだよ。…うん、怖いけどね…。」 「そうか…なら良いが。なんだか余計なこと言ったみたいで悪かったな。」 「ううん、色々考えてくれてありがとう、嬉しいよ。」  真鎖がそう言うや否や、教室前方の扉から先生が入ってきた。朝礼が始まる。  俺と真鎖は慌てて体を前に向けた。
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