俺様に目をつけられる話

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□-□ 「待たせてごめんね、やっと買えた…」  昼休みの学食にて、真鎖が飯を買い終わるのを席について待っていると、げっそりとした様子の真鎖がお盆を持って戻ってきた。  カウンターの方を見てみると、人が大量に押し寄せているのが分かる。 「今日も混んでるな。」 「うん。まあでも、美味しいから仕方ないよね…。」  真鎖はそう言いながら向かい側の席に着いた。 「今日はオムレツ定食にしたんだな。」 「美味しそうでしょー。嫁兼くんのお弁当に入っている卵焼きを1つくれるなら、俺のオムレツ一口あげるよ?」 「それ、普通に卵焼きも食べたいだけだろ。というか、卵と卵を交換するのかよ」 「だって卵好きなんだもん。三食全部卵料理でも良いってくらい卵が好き!」 「お前…将来高コレステロールとかに気を付けろよ」  そう言いながら真鎖の器に卵焼きを乗せてやると、真鎖は目を輝かせながらオムレツを切り分けて一欠片をおれの弁当箱に入れた後、卵焼きを口に運んだ。 「ん〜っ!オムレツのふわふわ感も良いけど、卵焼きのお出汁が染みた感じも美味しい!!もちろん甘い卵焼きも好きだけど…はあ、卵の可能性しゅごい…」  そう言って恍惚の笑みを浮かべる真鎖の背後に、突如誰かが複数人立った。その人物達の表情は友好的ではない。真鎖はというと、卵に夢中で自分の背後の人物の存在には一切気付いていない。 「……何か用か?」  俺の声により初めて自分の背後を振り返った真鎖は、喉の奥が引きつったような声をあげ、メデューサにでも睨まれたかのようにカチンコチンに固まった。 「そこは、織沢(おれさわ)さんの席だから、退けてくれない?」  数人いる中の1人が、俺の方ではなく真鎖の方を見ながら言い放つ。 「…っ…、っ…!」  真鎖は何かを喋ろうとして口は動かしているものの、声が出ないらしく、言わんとしていることは一切何も伝わってこない。よく見ると微かに震えており、先程までは涼やかな顔をしていたはずなのに、汗をかき始めていた。 「…ここは食堂で皆のものだ。他に空いている席もあるのだから、後から来たお前達はどこか違う席で食べるのが筋だろう。」  見かねて俺がそう言うと、声をかけてきた奴はキッと俺の方を睨んできた。 「はあ?アンタ何様のつもり?織沢さんが一体どれほどの人か知らないわけじゃないでしょ!?」  …織沢…誰だっけ…?  そう思ってその集団の面々を見てみると、後ろの方に明らかに他の奴らとは雰囲気の違う奴が立っていた。恐らく、こいつがリーダーの織沢という人間だ。そして多分、他の奴らは全員こいつの取り巻きなのだろう。  それを理解すると、俺はその織沢という人間を見ながら口を開いた。 「織沢という奴がどういう人間であろうと、先に座っていた人間に席を退かせる権利はないはずだ。…どうしてもここが良いと言うのなら、弁当持参の俺が席を譲る。場所的にはそんなに変わらないだろう。そいつはちゃんとここで物を買っているんだから、放っておいてやってくれ。」  取り巻きの人間はその言葉に目を釣り上がらせるが、織沢はそれを制しながら前に出てきた。
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