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恐らくは、相手のクラス、5組の奴なのだろうが、こいつは一体誰なのだろうか。
そして、俺は一体、何時何処でこいつを見かけたのだろうか…。
考えていると、ひとつ心当たりが胸に浮かぶ。
………ああそうだ、家に帰る時、校門で時々見かけるんだ。
こいつは、変わった色をした頭で、校門の前で他校の女子数人と待ち合わせしているから、いつも本当に目立っている。
うちは男子校だから、女子と一緒にいる奴は本当に本気で目立つんだ。
俺が、こいつに見覚えがあるのも、きっとそのせいだろう。
そう思い出したところで、芋づる式にまたひとつ、こいつに関することを思い出した。
そう言えば、こいつ、結構女遊びをするということで有名な奴じゃないか?名前は確か…
「クチヤ レイシ!!」
「クチヤレイシ…?それがキミの名前かぁ。なんだか変わった名前だね」
「は?俺のじゃなくて、お前の名前だろ?」
「えっ?オレ?……いやいや、全然チガウんだけど!?」
「え?全然違う…?」
おかしいな。誰かが噂をしているのを遠くから聞いたことがあったのだが、全然違うのか。
まあ、あまり興味がないから今の今まで忘れていた程度の記憶だし、間違えて覚えていたとしても不思議ではないが…。
「オレの名前は土屋 蕾智だよぉ!つ・ち・や、ら・い・ち!」
クチヤ、もとい土屋は少し丁寧に、俺に言い聞かせるように自分の名前を発音した。
つちや、らいち…。なんだ、クチヤレイシと似たような名前じゃないか。全然違うという程ではないな。
というか、プリンみたいな頭をしているのに名前はライチなのかよ。いや、別に悪いとは思わないし、俺には関係ないことだが…。
「で、キミの名前は〜?」
土屋はもう一度甘ったるく笑ってそう言う。
「嫁兼 翔琉だが…。」
「嫁兼 翔琉かぁ…じゃあ、『かけるん』だね!」
名前を教えてやると、土屋はニンマリと笑ってそう言った。
「かけるん…?いや、なんか嫌だな、その呼ばれ方は。」
「えー、じゃあなんて呼んだらいーの?」
「普通に『嫁兼』とか…」
「ええ〜っ!それじゃあツマンナイよ〜!…あっ、じゃあ『よめよめ』とかどう?可愛くない?」
「『嫁』の部分を強調するな!どこぞの腐男子が喜ぶだろう!」
まだ1年生で、仲良くなってからそんなに日が経っていない頃、真鎖に「嫁兼くんって、名前に『嫁』が入ってるんだね!じゃあ受けだね!」と言われた衝撃は、今でも忘れられない。
…くそ、こいつのせいで変なこと思い出したな。
「んん〜?じゃあ、『めがねん』は!?」
「それは普通に嫌だし、どこぞの眼鏡好きが呼ばれたがっていた渾名だな」
そう、眼良という名の眼鏡好きがな。
「ええ〜?じゃあ、『よっちゃん』は〜?」
「イカかよ!却下だ」
「もう、我儘だなぁ…『かーちゃん』でどうだー!」
「それ最早母親だろ…」
「ええ〜、仕方ないなぁ…じゃあ『かけるん』で我慢するよ」
「『かけるん』か…まあ、それなら……って、おい、結局1番最初の呼び方に戻っただけじゃないか!」
俺のその言葉を聞いているのかいないのか、土屋はバチリとウインクをして、「よろしくねー、かけるん!」などと言っている。
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