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「別にお前のせいじゃない。ただ、俺が、織沢達の言っていることがおかしいと思ったから口を挟んだだけだ。
それに、例え織沢が金持ちだとしても関係ないし、大丈夫に決まっているだろ。俺は俺の正しいと思う事をしたのだから、後悔していない。」
「…本当に?俺に気を使ったりとか…」
「俺がお前に気を使ったりなんかすると思うか?」
「……思えないのがまた怖いところだね…」
「だろ?…分かったら早くオムレツ食べろよ。急がないと冷める。」
俺の言葉に真鎖はコクリと頷いて、再びオムレツを食べ始めた。
「……うわぁ…ちょっと落ち込んでたのに、やっぱり卵美味しい…これは元気になっちゃうよ!」
顔を綻ばせる真鎖を見て、俺も真鎖に貰ったオムレツの欠片を食べてみた。
…確かに、ふんわりとしていて美味しい。真鎖が元気になるのも、分かる気がする。
「あっ。そう言えば、元気になったついでに聞くけど、嫁兼くんさっきはどうして偽名なんて使ったの?」
「なんかムカついたから。」
「うわー、正直だねー」
「逆にあれでムカつかない奴が居るのか?上から目線…というか、何となくだがこちらを見下している感じすらあるだろ、あいつ。」
「…ムカつくムカつかないは別として、ちょっと怖いっていうのはあるかな…。」
「怖い?怖いか?…まあ良い。どうせもう話すこともないだろうしな。」
「えっ、それはどうかな…織沢くんはなんだか嫁兼くんに興味あり気なカンジだったと思うんだけど…」
「やめろ、縁起でもないこと言うな。」
俺がそう言うと、真鎖はだらしない笑みを浮かべた。
「ふふふ…嫁兼くん、これで総受けに一歩近付いたね〜!」
「はあ!?」
「織沢くんがちょっと怖いのは置いとくと、お金持ちの俺様系×平凡って普通に美味しいと思うんだよね。価値観の合わない2人が何やかんやで絆されあっていく感じ…よくない?」
「良くない。」
「でもでも、そんなこと言って本当は」
「良くねーよ。ってか、早く食えよ!早くしないと昼休み終わるだろ」
「はぁい…あー、卵うま」
こいつ、落ち込んでいると流石に可哀想ではあるが、元気になると少々うるさいタイプだな。出来ればもう少し静かに、具体的に言えば何事もすぐにBLと結び付けるのをやめて欲しいのだが…まあ、無理だろう。
「はぁ…」
「溜息?ため息といえば嫁兼くん知ってる?溜息を吐くと幸せが逃げるってよく言うけど、本当は溜息を吐くと息を長く吐けて自律神経が整うから身体に良いんだって。」
「へえ、そうなのか。それは知らなかったな。」
「えへ、この前読んでたBL本に書いてあったんだ〜!」
「…はぁ…」
「えっ、また溜息?嫁兼くん自律神経乱れているの?大丈夫?」
主にお前のせいだわ、真鎖。
そう言ってやりたかったが、いよいよ本当に昼休みが終わりそうになってきたので言葉を飲み込み、食事に専念することにした。真鎖もそれを察したのか、少し急ぎめに食べ始める。
その後、なんとか食べ終えて教室に戻ったのは、授業開始2分前のことだった。
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