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「ってか、かけるんってオモシロイね!」
「はあ?」
「あんな自信満々に人の名前間違える人、初めて見たよ」
「それは…まあ、悪かったな」
「怒ってないよー、褒めてる褒めてる〜」
土屋は軽い声で笑い混じりにそう言った。
「かけるんのこと、ちょっと前から気になってたけど、こんなオモシロイんだったら、もっと早くに話しかければ良かったー!」
「はい…?」
気になっていた…?何故…
「だって最近、あのオレオがご執心のようだし、なんかヤバイって噂のろんろんも一緒に居るみたいだし、男子校に入学した美女って有名なめらちーも懐いているみたいだったから…あれは誰だろーって、ちょっと気になってたんだ〜」
ニコニコとしながら話す土屋に、俺は少し戸惑った。
えっと……俺からしてみれば、そいつらが誰だ?という感じなのだが…。オレオ?ろんろん?めらちー?
俺と関わりがあるということは、まさか、織沢、狼野、眼良のことを言っているのか?
だとしたら、凄い渾名だな!?
あと、狼野の何処がヤバイんだ?眼良が美女だと言うのも…分からなくもないが、やめてやれ…
と、その時、ボールがこちらの方に飛んできた。
「嫁兼頼む」だとか、「土屋サボんな!」だとかという声が、フィールドの真ん中の方から聞こえる。
隣をチラリと見ると、土屋はボールに足を出す様子がなかったため、俺がボールを蹴った。
同じクラスの奴らは「ありがとう」と言って笑い、また攻撃を始める。
が、しかし、それとは対照的に、俺の右の足首はジクジクと痛み出す。というか、本当に痛いな…
「…かけるん、もしかして」
土屋はそう呟いた。そして、次の瞬間には、笑みを顔に浮かべた。
「かけるん!オレと本格的なサボろーよ!」
「は?いやいや、何言ってんだよ!?普通にダメだろ…つか、何故」
「オレがかけるんとサボりたいから!はい、これ決定事項ね!行こっ!」
そういうや否や、土屋は俺の方に近づいてくる。
なんだか嫌な予感がして、逃げようとするが、足が痛んで思うような速さは出なかった。
そして…。
「はいっ!捕獲!」
その声と同時に俺の背中に土屋の腕が回ってきた。そして、もう片腕は膝の裏側に回される。
何事だ!?
不安になり、怪我をしていない左足で踏ん張ろうとするが、それはあえない努力であった。
土屋の腕には力が込められ、すぐに俺の体は地面から浮いてしまう。
どうやら土屋は俺を抱えてしまったようだ。
…って、これは俗に言う「お姫様抱っこ」というやつじゃないか!!
「おま、何だこれ、下せよ!」
「嫌だよー、下ろしたら一緒に来てくれないデショ?」
「当たり前だろ!!」
「じゃあ、やっぱ下さない。試合なんてサボってさ、保健室辺りで、一緒に駄弁ろーよ」
土屋はそう言って悪戯っぽく笑った。
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