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「それじゃあ…お言葉に甘えて…」
俺は、土屋の言う通り長椅子に寝転がり、土屋の膝の上に足を乗せた。
「…ちょっと腫れてるね」
俺の足を見た土屋は、少し労しそうに言った。
「まあ…結構派手に転んだかrっひぅ…!?冷たっ…!」
話している最中、突然足首に冷たいものが当てられる。見ると、足首には氷嚢があった。
なるほど、これは氷嚢の冷たさだったのか…。ビックリし過ぎて、思わず変な声を出してしまった…恥ずかしい
「驚かせちゃった?ごめんごめん」
土屋は、軽い調子でそう謝った。
あんまり悪いとは思っていなさそうな謝り方だな…。
一瞬そう思ったものの、すぐに思い直した。
こいつはわざわざ手当てをしてくれているのだし、申し訳ないだなんて思う必要はない。寧ろ謝るべきは俺だろう。
「俺の方こそ、すまないな、土屋。」
「え?何が?」
俺の謝罪に、土屋は首を傾げる。
「土屋、俺をここに連れてきたのは、俺が怪我をしていることに気付いていたからだろ?それなのに、結構強く抵抗してしまったし…」
「あ〜、なぁんだ、そんなことー?」
土屋は可笑しそうに笑った。
「そんなことって…」
「そんなこと、だよ!オレ的にはサボるための良い口実になったし、何より、かけるん可愛くてオモシロかったからオールオッケーってカンジ!」
「はっ?!」
待て待て、こいつ今、俺のことを『可愛いくて面白い』って言ったか?
何故…何処が…?謎すぎる…
「かけるん、実はお姫様抱っこされるの結構恥ずかしかったでしょ?」
「それは…」
「ふふ、ちょっと赤くなってて可愛かったな〜」
土屋はそう言ってクスクスと笑った。
俺はその様子を見て、少し恨めしいような気持ちになる。
「…分っていたのなら、もう少しマシな運び方をしてくれたら良かったのに…」
「オモシロかったから、つい」
つい、じゃないだろ、何なんだよこいつ…少し意地悪だな…さっき良い奴だなとか思ってしまったの、全力で取り消してやるっ!
「かけるんがオモシロくて可愛いの、お姫様抱っこの時だけじゃないよ。さっきの氷当てられた時の声もすごく可愛いかったなぁ…」
土屋は笑ったままそう続けた。
さっきの声って…まさか、驚き過ぎて出たあの変な声か?
いや、趣味悪いな!?と言うか、あの声はかなり恥ずかしいから、出来ることなら忘れて欲しいのだが…
「あー、かけるん、また赤くなってる〜!カーワーイーイー!」
「うるっさい!土屋少し黙れ」
土屋は「はいはい」などと適当に返事をした後、俺の言葉通り何も言わないでいる。
しかし、その顔には新しい玩具を見つけた子供のような笑みが浮かんでいる。
こいつ、良い奴だなんてとんでもないな。寧ろ人を揶揄うのが好きな少し嫌な奴じゃないか…!
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