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しばらくの間、互いに黙ったまま時が過ぎていった。
そしてそのうち、土屋はガサゴソと自分のポケットを探り、ひとつ飴玉を出す。色合い的に苺味であろうその飴の包装紙を破り、土屋はそれを口の中に放り込んだ。
その一連の動作を見ていて、そう言えば先程試合でも飴を舐めているようだったなということを思い出した。
「飴、好きなのか?」
「うん、大好き。というか、甘いもの全般、大好きかなぁ!」
土屋はそう言った後、またポケットの中を探って、今度は両手いっぱい使わないと持てない程の、大量の飴を出した。
いや待て、あまり大きくないであろうあの体操服のポケットに、あんな大量の飴玉が…?
4次元ポケットか?土屋の体操服のポケットだけ4次元ポケットなのか!?
「かけるんも何か要る?」
「え…?」
「飴だよ!色々フレーバーがあるんだよ!イチゴにメロンにスイカにブドウ、マンゴーとかレモンとかパインとかモモとかリンゴとか、あとはライチにラムネにコーラにミルクにプリン、バナナ、オレンジ、マスカット、黒胡麻、キャラメル…」
「いや、多いな!?多過ぎるだろ!」
「いやぁ、見たことない味を見つけると、つい、欲しくなっちゃってねぇ…」
「それにしても多いな…」
「そう?…で、かけるんは何が欲しい?」
そう言って土屋は首を傾けた。
これは、もう俺が飴をもらうこと前提で話が進んでいるな…。
「えっと…じゃあ、メロンで…」
俺がそう言えば、土屋は満足気に笑った。
それから、土屋は俺に飴を手渡した。
それを受け取り、封を破って口の中に飴を放り込む。
すると、メロンのフレッシュな香りが口の中に広がった。
飴を食ったのは、すごく久しぶりなのだが、こんなに美味しいものだっただろうか?
もっと甘ったるくて喉の痛くなるようなものだと思っていた。
しかし、この飴は香りこそしっかりとするものの、控えめな甘さで、俺の口によく合う。
「ふふ…その飴、オレ的に超オススメなんだぁ〜!気に入った?」
「ああ…美味いな」
「そっかぁ…いつでもあげるから、欲しくなったら言ってね!」
土屋は嬉しそうにそう言った。
それからまたしばらく時間が経った。
飴ももう飲み込める程度に小さくなった頃、ガラリと扉が開く。
「失礼します…嫁兼先輩は居ますか?」
部屋の中に響く高めの声。
その生じた方を向けば、そこには声の主と、その後ろにもう1人生徒__眼良と真鎖か立っている。
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