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「眼良…?お前、本当に大丈夫か?」
明らかに様子のおかしい眼良が心配になり、そう聞くと、眼良はまた焦ったような顔をする。
「は、はいっ…本当に大丈夫なんですっ!大丈夫…だけど、その、嫁兼先輩が他の人に触られるのを見ると、ちょっと胸がモヤモヤしてギュとなるっていうか、なんていうか……あっ」
眼良はそこまで言って、慌てて自身の口を両手で塞いだ。
眼良は、口にしてはならないことを口にした、という顔をしているが、俺はそれを他所に、眼良の訴えた症状が気になって仕方がなくなった。
何となく、その症状、胸にツキんと引っかかるのだ。
「モヤモヤ…ギュッ…」
口の中でそう呟いた。そして、呟いて、ハッとなった。
その症状は、まさか…
「眼良、それは心臓病じゃないのか!?病院には行ったのか?!」
「えぇっ…?」
眼良は驚いたような表情をして、コテンと首を傾けた。
「『えぇっ…?』、じゃなくてだな!命に関わることだったら不味くないか!?
うちの婆ちゃんもな、去年眼良と同じような症状で病院に行って診てもらったのだが、心臓病だったんだ。まあ、治ったが…
…眼良は、大丈夫なのか…?まだ病院に行ってないなら、行った方が絶対良いぞ」
俺がそう言えば、眼良はさらにポカーンとしたような顔をする。
え、何だその表情は…。もしや、俺が今言ったことは、一切眼良の頭には届かなかったのだろうか…?
少しの間、この場に居る誰もが、何も喋らず、沈黙が場を支配した。
が、しかし…
「ぷっ…ふふっ…」
皆が黙ってしばらくした時、何処からか笑い声が漏れて来た。
何処からか、と言っても、その声が聞こえるのは俺の足元の方、つまりは土屋の方からなのだが…。
「土屋…?何笑ってんだよ?」
「あははっ!だって、心臓病って…ふふっ、かけるん超マジで言ってるから!ふっ…あははっ!」
土屋は可笑しくて堪らないというような様子で爆笑している。
「土屋、…何が可笑しいんだよ?お前、心臓病を甘く見てんのか?!」
「んふふっ、ごめんごめーんっ!心臓病をナメてるわけじゃないんだ、怒らせちゃったなら謝るよ。
でも、めらちーのは、決して心臓病なんかじゃないよ〜!」
「は…?」
「ってゆーか、病っちゃ病だけどぉ、コレ、お医者さんが治すのは絶対ムリなヤツだから…くふふっ…あはははっ!」
土屋はまた、先程のことを思い出したかのように笑い始める。
医者にも治せない病…?それって、不治の病的なやつか……?
それってつまり、眼良は…。
そう思った途端、顔からサッと血が引くような気がした。
未だにポカンとしている眼良の方に自然と視線が吸い寄せられる。
しかし、そんな俺を見て、土屋は何故か妙に温かい目をしながら、また再び笑う。
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