523人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふふっ…かけるん、顔色で何考えてんのかバレバレなんだけど!命に関わるカンジじゃないし、急を要するカンジでもないから、そんな可愛い顔しないで☆」
そう言って土屋は明るく笑った。
はあ?命には関わらない…?
しかし医者にも治せない…。一体どんな病気なんだ?
俺が首を傾げると、土屋はまた口を開く。
「ねえ、かけるんって、もしかしてコイをしたことない?」
「は?」
コイ…コイって、恋愛とかそういう?
「いや、どうして、突然恋愛の話になるんだよ?」
「えー、だって、かけるんが信じらんないくらい鈍感なんだもーん!だから、恋したことないのかなぁって!」
「はあ?鈍感って、お前、俺のこと馬鹿にしているな!?…俺だって、恋くらいしたことは…………」
ん…?恋?
恋って、誰かを好きになったりするアレだよな?
恋をしたこと、誰かを好きになったこと………
…あれ?俺、まさか……
「……ないな…え、俺、恋したことないのか!?」
今までの自分の人生を思い起こして、その結果を口にして、改めて耳で聞いてみて驚く。
俺、人を好きになったことが1度もないではないか…!
「えっ、かけるん、今までそれすら無自覚だったの〜?!」
「だって、そんなの考えたことあまり無いし…」
「…あははっ、かけるんってホント変わってるー!想像以上に鈍い!超可愛い!」
土屋はそう言いながら、俺の片手を取って、ギュッと握った。
「は?おい、何だよ」
「んー?何でもないよ。ただ、かけるんって、やっぱり恋をしたことないんだなぁって」
土屋はどことなく嬉しそうに微笑んだ。
そして、ボソッと呟く。
「…オレと同じだ」
「え?すまない、声が小さくて聞こえなかったのだが、何て言ったんだ?」
土屋が何を言ったのか分からなくて聞き返した。
すると、土屋は何故か指を絡めて来た。
え、なんだその触り方、すごくゾワゾワする…。
「ふふ、何でもないよ。………あーあ、かけるんのことオトせる人って、どんな人なんだろうね」
絡めた指をニギニギとしながら、土屋は優しく笑った。
…落とす?それはどういうことだろうか。
それは、高いところから落とすとか、そう言うことか?いや、でも何故そんなこと気にしてるんだ?
というか、土屋はどうして指を絡めて来たんだろうか…?
頭にハテナを浮かべまくっていると、突然、土屋に握られている方の手首を、他の誰かに掴まれた。
俺の手首を掴んだ手は、小さく色白なものである。
「眼良…?」
その手の主人は眼良であったが、視線をその顔に向けると、何だか少し浮かない表情をしていた。
最初のコメントを投稿しよう!