1、シェアハウス、開業

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1、シェアハウス、開業

 古屋誠は、脱サラしてシェアハウスの経営に乗り出した。親から相続した東京郊外の山間の大きな家を処分しようとしたところ、友人の助言で、せっかくだから古民家カフェにでもしてみたら、とアドバイスをもらったのがきっかけだった。  カフェにしてもいいが、バツイチで一人暮らしの誠は、むしろどこか人恋しくなり、シェアハウスを選んだ。古民家シェアハウス。退職金で古い日本家屋にかなり手を加え、どうにかおしゃれな雰囲気をつくり出した。昔ながらの和式便所も改造した。囲炉裏やかまどの跡や土間を残した。  部屋はもちろん冷暖房付き。  単身の若いサラリーマンなどが来てくれるといいな、と思い、広告を出した。広告には、猫がいることももちろん書いた。「にゃー」という猫である。猫好きでないと猫との共同生活は難しいだろうから。  グレーのシマ猫の「にゃー」は、誠の相棒と言っていいくらいの、とても賢い猫なのだ。
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