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西の丘に向かうにはあるダンジョンをクリアする必要がある。
それは土地神に供物を捧げる、というものだ。
欲しているものを聞き、それに沿った物を与えるだけなので難しくはない。
さっきマルガリータが言っていたように、私は移動速度が速い。
レベルの「おい、ここの土地神はいるか?」
「神になんという口を…!お前は何様のつもりだ!」
「そうだそうだ、貴様は一体誰なのだ!」
「私の名前はグレーテ=ティファート。西の丘に用がある。
土地神に供物を捧げるためにここへ来た。さっさと呼べ、さもないと…」
私はカタナをちらりと見せた。
「ひいっ、早く、早く土地神様を…誰か…!」
「わしならもうここにおる。グレーテ、と申したな。
わしはここの土地神のヴァルデだ。供物を欲している。
今回はそうじゃな…喉が渇いているので水をくれないかのう?」
「土地神様!そんな安請け合いをしてはダメです!
きっとこいつは恐ろしい奴ですよ!」
「うるさいのぉ、わしがいいと言っておるのだからいいのじゃ。
横から口を挟むではない。身を弁えろ」
「失礼いたしました土地神様…」
「で、どうだね?水は持っておるか?」
「ある。だが全て貴様にやるわけにはいかん。この先で必要になるのだ。
少しでも構わんか?」
「あぁ構わんよ。少しで良いのじゃ。ありがとう」
花を生かしたまま持って帰るために持ってきていた水を少し分けた。
ほんの少しね。
私は供物を捧げた。すると丘への道が開けるのだ。
礼を述べることもせず、私は丘へと急いだ。
「小さなピンクの花?そんなものどこに…」
そう思っていたらふと、動く花を見つけた。
ピンク?紫じゃないか。
まぁいい、たぶんこいつだろう。
私は根ごと引き抜き、水に浸した。
その瞬間、体に衝撃が走る。
「ぐっ、なんだこの花は…?」
私のHPゲージが少し減っている。
待て、こんなことがあるとは聞いていないぞ。
どうやらこの花は水ではなく、私のHPを食っているようだった。
あの女…大事なことを言っていないじゃないか…
考えている間にも少しずつ体力が少なくなっていく。
私は急いで帰ろうとするが、少しずつ減っていく体力は地味にキツイ。
移動速度が格段に落ちていることを感じながらも何とかマルガリータのもとへ戻った。
「あら、意外と早かったわね?おかえりなさい」
「くそっ、私のHPが減っているじゃないか、なぜ言わないのだ!」
「まぁまぁ落ち着きなさいよ、そんな小さなことは今はいいじゃない。
そんなことより花はどこ?すぐにほしいの」
私は花を差し出した。
「あら、随分長いこと生きたお花ちゃんを摘んできたのね。
紫がかっているじゃない、お疲れさま。
そうだ、お茶を淹れたの、一杯どう?」
「では、一杯だけいただこう」
「ふふっ、おいしいから心配しないで」
私はお茶をグイっと飲み干した。
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