初出勤です

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「親衛隊について詳しくお聞かせ願えないでしょうか。」 「………いいよ。立ってるのも何だから、そこの椅子に座って。何も出さないから、期待しないでね。」 麻田サンは先程私が見た、椅子の一つを指指してくれました。 「はい。」 私が椅子に座ると、麻田サンは私の前の位置に供えられている椅子に腰掛け、話始めました。 「…この学園は顔の整っている方々が非常に多いんだ。特に…生徒会と風紀委員会ね。 その方々を慕う僕みたいな人が集まって、彼らの生活をサポートしているのが親衛隊だよ。」 「…そうなのですね。 しかし、貴方達が親衛隊として彼らをサポートするメリットが無いと思うのですが…。」 「フフッ ……彼らはね、月のような方々なんだよ。 だから、そこら辺に落ちている石ころみたいな僕等には見向きもしない…。 …少しでも、僕という存在を知って欲しい。 ………………こんな思いからやってるんだよ。」 麻田サンは自嘲気味に微笑んでから、そう言いました。 彼の顔は切なそうに歪められており、何故か私の心がキューっと苦しくなりました。 「………そうなのですか。 ご説明ありがとうございました。 あ、そういえば今の時間、授業中である筈なのですが、このような所に居て大丈夫なのですか? …………一応、本日から先生なので。」 「あぁ。平気だよ。僕は、学年で5位以内に入っているからね。 5位以内に入ると、授業を免除してくれるんだ。」 「そうだったのですね。それは、失礼しました。 それでは、私はまだ学園をまわりきれていないので、お暇させて頂きます。」 私が立ち上がり、廊下へと歩みを進めると………… またもや麻田サンに手を掴まれてしまいました。 「あっ。」 「?」 麻田サンはご自身で私の手を掴んだのに、弾かれたように手を離しました。 私は訳が分からず、首を傾げていると、麻田サンは俯きながらボソボソと話始めました。 「あ…あのさ。……また、此処に来てもいいから。 …………今度…は、お茶……出してあげる……。 大抵……此処に…いるから。」 …なるほど、要するに、また此処に来い。ということですか。 任務がし易くなるので、ぜひそうさせて貰いたいです。お茶も出してくださるのなら、尚更ですね。 私は、無類のお茶好きですから。 コーヒーも好きですよ。 「はい。そうさせて頂きます。」 私がそう答えると麻田サンは後ろを向いてしまわれました。 機嫌を損ねてしまったのか…と思い、彼の姿を覗き見てみると、右手でガッツポーズを決められていました。 …ご機嫌なようで何よりです。 「それでは、失礼しました。」 最低でも、風紀委員室に辿りつかなければならないので、今此処で麻田サンに時間を使っている暇は有りません。 次に行きましょう。 麻田サンは私が声を掛け、廊下に出たことに、気づかない程、ご自身の世界に入り浸っているようなので放置しておく事にしました。 …それにしても、何故、ウサギの中に入っていたのでしょう。
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