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そして伝説へ…
「て、鉄甲船…?」
愛萌もタイムマシーンを見た。
━━この飛行機のような形のタイムマシーンは、この男性には《鉄甲船》に見えているようだ。
「それにしても参った…。」
男性は頭を抱えた。
「え?」
愛萌は、男性を見た?
「景虎様は…。」
男性は少し間を置いて、
「亡くなっておられる…。」
と言った。
「……。」
愛萌は、申し訳なさそうに下をむいている。
「景虎様は今、家督(かとく)争いをされている時なのだ…。」
と、男性は言った。
「あの…あなたは…?」
愛萌は訊いた。
「拙者は、中条藤資(なかじょう・ふじすけ)。
長尾景虎(ながお・かげとら)様にお仕えする者だ。」
と、その男性、中条藤資は答えた。
「おぬし…。」
藤資は愛萌を見て、
「景虎様と身の丈が似ておるな…。」
と言った。
「え?」
愛萌は、景虎の遺体を見た。
━━確かに、同じくらいの背丈、むしろ、愛萌の方が高そうだ。
ちなみに、長尾景虎の身長は約156cmである。
実は、年齢も同じ19歳なのだ。
━━実は、この時代の平均身長は低く、成人男性でも150cm前後である。
「おぬし…、すまぬが…。」
藤資は少し間を置いて、
「景虎様の影武者(かげむしゃ)になって下さらぬか?」
と訊いた。
「!?」
愛萌は目を丸くして、
「わ、私がですか!?」
と、藤資を見た。
「さよう。」
藤資は頷いて、
「家督争いの最中に、景虎様が亡くなられたなどと、敵方に知られてはまずい…。」
と、続けた。
「で、でも…。」
愛萌は困惑して、
「私、馬にすら乗れません…。」
と言った。
「その辺りの教育は、拙者がお教え致す。」
藤資は少し間を置いて、
「それに…。」
と、愛萌を見た。
「そ、それ…に…?」
愛萌も、藤資を見る…。
「もし、この申し出を拒むなら…。」
藤資は愛萌を見て、
「景虎様を暗殺した狼藉物(ろうぜきもの)として、この場で斬り捨てる事になるであろう…。」
と、自分の脇差しに手を添えた。
「え!?」
愛萌は絶句した。
(ど、どうしよう…)
愛萌は困ってしまった…。
すぐにでも、現代に戻りたかったが、難しそうだ。
もし戻っても、過去の時代の歴史を変えてしまった罪で、おそらく罰せられる…。
それに、藤資の頼みを断れば殺される…。
「……。」
愛萌は少し間を置いて、
「お、お受け致します…。」
と答えた。
「誠か?
かたじけない。」
藤資は頭を下げた。
「では、その格好では目立つので、景虎様の着物をお渡しする…。
拙者の馬の後にお乗り下され。」
と、藤資は言った。
「は、はい。」
愛萌は頷いた。
そして、藤資の馬の後ろに乗った。
「その鉄甲船は、拙者が上手く隠す…。」
藤資は、タイムマシーンを見た。
そして藤資は愛萌を乗せて、来た道を戻って行った…。
━━藤資の馬の後に乗っている愛萌…
「!?」
愛萌は、ハッとした!
━━長尾景虎。
歴史通りなら、この2ヶ月後の1548年12月30日、春日山城(かすがやまじょう)に入城して、長尾家の家督を相続する。
後の上杉謙信である。
(上杉謙信女性説の真相は…私!?)
愛萌は驚きを隠せなかった…。
《終わり》
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