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霧の山道
一
目が覚めた時、最初に眼に入ったのは、部屋に備え付けられた小さな椅子とテーブルの向こう側にある、格子付きの縦長のガラス窓だった。そこに高原のさわやかな自然の風景や、活気溢れる街の様子でも見えていれば、爽快な気分で朝を迎えられるわけだが、残念ながら、そのガラス窓は一面、淡い白一色で、まるで雪の日の朝のようだった。しかし、そこから放たれている光は、雪のそれよりはやや鈍く、このまま眺め続ければ、再び眠りに落ちてしまいそうな気だるい波長を孕んでいた。
霧なのだ。それも半端な濃さではない。
「また今日もか・・・」
僕はベッドの上で横たわったまま、大きく溜め息をついた。
昨日の朝から、ずっとこの調子の天候が続いていたのだ。山の上に位置するこのサパという名の街は、まだ濃い霧の中にスッポリと包まれたままだった。
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