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女にはスパイスが必要
何かあれば連絡しろと、うちの電話番号を教えておいて正解だった。
電話が鳴った時、驚くでも怒るでもない。ただ、『ああ、ついにやったのか』と思った。
「まさかこんな事をするなんて、父親である私も思いませんでした。しかし、娘が暴力に訴えるしか出来ない程、苦痛を受けてきたとすればどうでしょうか?娘だけを、悪者にするべきではないでしょう。」
「娘が大人しくて模範的な生徒である事は、貴方方教師も知っている事と思われます。ならば、彼女が何故クラスメイトに暴力を振るったのか、理由を知るべきです。」
「今回だけは被害者となった子供達だけではなく、クラスメイトや全校生徒にも、お話を伺って下さい。きっと目撃者がいます。他にも虐めが起きていないか、調査してくださいますね。虐めが横行する学校に、子供を置いておきたくはありません。」
よくも、まぁ、べらべらと喋れるものだ。しかし、この人の詐欺師っぷりのおかげで、この件はどうにか丸く収まるのだろう。
職員室の引き戸が開き、スーツ姿の男が出てきた。
引き戸の隙間から、頭を下げる教師共の姿が見えた。
黙って立ち去る男の後を追う。校舎から出て、人気の無い場所まで来たところで、軽く頭を下げた。
「あざっす。松林先輩。」
松林は苦々しげな顔で、睨みつけてきた。
「ったく、お前に呼ばれる時は、ロクでもない事ばっかだ!1つ貸しだ!」
「未成年に集るんすか?」
「こういう時だけ、ガキの立場使いやがって。もういい…さっさと紗知ちゃんとこ行ってやれ。」
「流石、松林先輩。女の扱いがわかってらっしゃる。優しいお人だねぇ。そりゃ、モテる訳だ。」
「今のは嫌味だな。俺がこの歳になって、彼女出来ねぇ事への嫌味だな?1発殴らせろこの野郎…足早っ!?」
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