女にはスパイスが必要

1/2
前へ
/12ページ
次へ

女にはスパイスが必要

何かあれば連絡しろと、うちの電話番号を教えておいて正解だった。 電話が鳴った時、驚くでも怒るでもない。ただ、『ああ、ついにやったのか』と思った。 「まさかこんな事をするなんて、父親である私も思いませんでした。しかし、娘が暴力に訴えるしか出来ない程、苦痛を受けてきたとすればどうでしょうか?娘だけを、悪者にするべきではないでしょう。」 「娘が大人しくて模範的な生徒である事は、貴方方教師も知っている事と思われます。ならば、彼女が何故クラスメイトに暴力を振るったのか、理由を知るべきです。」 「今回だけは被害者となった子供達だけではなく、クラスメイトや全校生徒にも、お話を伺って下さい。きっと目撃者がいます。他にも虐めが起きていないか、調査してくださいますね。虐めが横行する学校に、子供を置いておきたくはありません。」 よくも、まぁ、べらべらと喋れるものだ。しかし、この人の詐欺師っぷりのおかげで、この件はどうにか丸く収まるのだろう。 職員室の引き戸が開き、スーツ姿の男が出てきた。 引き戸の隙間から、頭を下げる教師共の姿が見えた。 黙って立ち去る男の後を追う。校舎から出て、人気の無い場所まで来たところで、軽く頭を下げた。 「あざっす。松林先輩。」 松林は苦々しげな顔で、睨みつけてきた。 「ったく、お前に呼ばれる時は、ロクでもない事ばっかだ!1つ貸しだ!」 「未成年に集るんすか?」 「こういう時だけ、ガキの立場使いやがって。もういい…さっさと紗知ちゃんとこ行ってやれ。」 「流石、松林先輩。女の扱いがわかってらっしゃる。優しいお人だねぇ。そりゃ、モテる訳だ。」 「今のは嫌味だな。俺がこの歳になって、彼女出来ねぇ事への嫌味だな?1発殴らせろこの野郎…足早っ!?」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加