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紗知は、いた。
駐車場で立ち尽くしている。じっと、車の出入りを見つめる姿は、親の迎えを待つ姿にも見えた。残念だが、お前を迎えに来るのは、優しい母親じゃない。
「紗知…。」
「…お母さん来てないよね?」
やはり、親の事を気にしていたか。
「大丈夫だ。松林をお前の父親代わりに呼んだ。」
「…そう。よかった。」
「どうした?後悔でもしているのか?」
紗知がやった事は、聞いている。
そして『見た』。
後輩の1人が、こっそりと騒動をムービーで撮って、自分に送ったのだ。
何ともまぁ、派手に爆発したと言うべきか。
以前の紗知ならば、口で何かを言いはしても、やり返す事はなかっただろう。
しかし、紗知は反撃した。
片っ端から、水筒で殴りつけた。机に飛び乗って、顔を蹴り飛ばした。椅子を投げ飛ばしてぶつけた。
更には、いつの間に集めたのか、ポケットから石を取り出し、馬乗りになって相手の口にねじ込み、そのまま顔を殴りまでした。きっと、口内炎どころではないだろう。
それらを嗤いながら、やってのけたのだ。
「うん、止めに入った先生にもやりたかったなぁって、後悔してるよ。」
あんな事をしても、まだ足りないというのか。お前は、本当に。
自分も笑いが込み上げてくる。
「こーら、先公もやっちまったら駄目だ。大人は利用するモンだぞ。俺みたいに。」
「そっか。そうだね。考えが足りなかった、ごめん。」
「あぁ、わかればいいんだ。いい子だ、紗知。お疲れ様。今日は好きな物食べさせてやるからな。」
(本当に、俺好みに育ったな。)
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