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それから何度言っても、怪我をしたり、巻き込まれるものだから、護身術を覚えさせる事にした。運動は大事だ。
健康体になるし、何より側に置くならスタイルの良い女にしておきたい。
しかし、自分は教えてはやれない。
体格も力も違いすぎる。はずみでボッキリ折ってしまいそうだ。
そこで、寂れた道場を持つ、後輩の家に押しかけ、週に3回稽古をつけるように言いつけた。
それから、数週間が経ち、後輩が泣きついてきて鬱陶しかった。
「晃さん!!!どうにかしてくださいよ、紗知さんを!!」
いつの間にか後輩は、自分よりも年下の紗知を『さん』付けするようになっていた。
「何だよ。あいつの覚えが悪かったのか?」
「いやいや!むしろ覚え良すぎですから!!もう、あの子の相手出来る奴いないぐらいですもん!」
「んな訳あるか。あいつの細腕で、大柄ばっかのお前の門下生がやられるとか、どんなコメディだよ。」
「コメディじゃなくて、ホラーですから!!信じないなら、1度見に来てくださいよ。蹴りが特にすごくて。」
「蹴り?」
確か、後輩のところは剣道道場だったはずだ。何故蹴り等という単語が、出てくるのだろうか。
「おい、蹴り技なんか剣道にねぇだろ。」
「え、あ、晃さん言ってませんでしたか?うちの道場、あんまりにも人来ないんで、色んな武術教えるようになったんすよ。」
「ああ?」
「空手も柔道も、あと女性の受講生増やしたくて、キックボクシングやブラジリアン柔術とかも。うちの親父、根っからの武闘家でして、全部出来るんすよ。あ、キックボクシングやブラジリアン柔術は姉貴が教えてます。」
最近目潰しや、金的蹴りの速度と威力が上がったのはそれか。素早さも上がって、嫌いなほうれん草を食べさせる事も、困難になっていたのも。
「…全部お前のせいか。」
「え!?俺のせい!?」
とりあえず、後輩を殴った。
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