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「アキ!!」
ムカつくドヤ顔で、テスト用紙を見せてくる。そういえば今日は、学期末のテストが返ってくる日。確かに自慢したくもなるか。どれも100点か90点台ばかりだ。
「苦手だった英語が98点か。進歩したじゃねぇか。」
「な!!私よく頑張った!」
「あぁ、よくやった。偉いな。」
自画自賛する紗知の顔が、余りにも無邪気だったからか。自然と紗知の頭に、手が伸びていた。力加減がいまいち掴めず、そっと撫でる。すぐに気持ち悪いだの、ギャーギャー言われると思っていたが、紗知は静かだった。
顔を顰めるでも、馬鹿にしたように笑うでもなく、ただ静かな無表情があった。
「紗知?」
「あ、ごめん。びっくりしちゃった。はは…親にも撫でて貰った事、なかったから。」
乾いた笑い声。動揺して揺れる瞳。若干肩が震えている。こんな事さえも、お前の親は満足にしてやれていなかったというのか。どこまでも、昔の自分と重なる奴だ。
「アキも教えてくれて…ありがとう。」
滅多に出ない、紗知からの感謝の言葉。今度は俺がフリーズしそうになる。俺こそ人に感謝された事は無かった。
「アキの教え方、すっごくわかりやすかった!!教師向いてるんじゃない?いいじゃん、ヤンキーゴリラ先生!」
「誰がヤンキーゴリラだてめぇ…。て、俺が教師なぁ…。」
そういえば、そろそろ進路の話が出る頃だ。
大学に進学しようとは思っていたが、学部については希望がない。
法学部や経済学部が無難かと考えていたが。この自分が、教育学部か。
「紗知、お前はいつも面白い事を言うな。」
また紗知の頭を撫でまくった。今度は流石に痛いと騒がれてしまった。
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