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「あーあ、いいなぁ課長、俺も一度でいいから岩瀬さんみたいな美女から告白されてみたかったなぁ」
「静かにしろ」
廊下で名前を出す小山を、晴久は肘で小突いた。
ちょうどそのとき、女性社員が突き当たりからこちらへ曲がってきた。
眼鏡にマスク、晴久はそれが雪乃だとすぐに分かると、小山を小突いたまま固まった。
「お」
小山だけが短く声を出した。
雪乃は何も言わず、視線も合わせずに会釈だけをしてすれ違っていく。
晴久は、足早に廊下を去っていく彼女の背中を目で追いながらも、何も声を掛けることはできなかった。
「知ってますか課長、今の細川さんっていうんですけど」
彼女が去ってから突然そう切り出した小山に、晴久は「えっ」と声を漏らす。
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