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◇◇◇
『お仕事中にすみません。今日はやることがあるので、定時で先に帰って自宅に戻ります』
フリースペースで昼食をとっていた晴久は、雪乃からのメッセージを見て固まった。
こんなことはなかったのに、珍しい。
ひとりで帰すことは心配だが、特に反対する理由もなく、『分かった』という返信を作る。
しかし送る前に、やることって何だ?という疑問が湧き、それを文面に含めようかとしばらく考えた。
(……いや、彼女にも色々あるだろう)
ひとりで納得しつつ、何も加えずに送信をタップする。
しかし送った後で余計に疑問は膨らんでいき、晴久は食事の手が進まなくなった。
思い返すと、先週の土曜はデートをし、日曜は家で過ごした。
終始二人きりでべったりで、晴久は両日とも雪乃に手を出している。
(もしかして、負担だったか?)
思い当たりすぎて、飲んでいるコーヒーが苦くなった。
こういう付き合い方をしたいわけではなかったが、五年以上も異性に対する欲を封印していた晴久はいつの間にか雪乃を抱くことに夢中になっていた。
彼女に負担をかけている自覚はあったのに止められなかった自分を後悔しつつ、もしこれが彼女の意思表示なら今日はそっとしておこう、そう思い、それ以上の連絡はやめた。
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