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しばらく会えない、しかも荷物も撤去するというのだからそれは数日というニュアンスではない。
強い言葉は使わないあの雪乃が、すでに決意を固めたようなメッセージを送ってきたことに動揺を隠せなかった。
毎晩迫ったことが体の負担だったのならまだやりようがあるが、もしそれが心の負担だったのなら……。
(……嫌われた?)
晴久はそう思うと、胸が貫かれるようだった。
まだ付き合って一週間だが、これでもかというほど雪乃のことを好きになっていた。
家に連れ込んだことや、毎晩求めたことが苦痛だったのなら、距離を置いた正常な付き合いに今すぐ戻してもいい。
とにかく雪乃を失いたくなかった。
正解を探して頭を悩ませるが、始業時間までに妥当な返信を考え付きそうになく、重い頭をもたげてPCと向き合った。
「おはようございます高杉課長! 出張無事終わりました! ありがとうございました!」
「……ああ。おはよう小山」
始業五分前。昨日一日、東北へ出張に行っていた小山も今日から本社へ戻った。
小山は来て早々に土産の菓子を晴久に渡しながら、「寒かったですよ向こうは」と感想を語り始める。
晴久は「お疲れ」と相槌をうちながら、彼の話には上の空だった。
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