「ここで抱かせて」

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晴久と小山は営業先へ訪問した後、昼食にいつもの蕎麦屋へ立ち寄った。 「高杉課長。何か今日元気なくないですか?」 「……えっ」 蕎麦に箸をつける晴久の顔を、小山はじっと覗き込む。 ここまでの道中で出張の感想をあらかた話し終えた彼は、今度は晴久の話を聞きたがった。 気分が沈んでいると小山に悟られたことが情けなくなった晴久は、「いや、別に」と表情を引き締める。 しかし小山はまた別のことを思い出したらしく、「あ!」と声を上げた。 「そうだ俺、課長に聞きたいことがあったのに忘れてました」 「……何だ」 「ちょっと待って下さいね、彼女から言われたんですけどー」 そう言って携帯の画面をタップし始めた小山に、晴久は嫌な予感がした。 この口が軽い男に何でも話す彼女が絡むと、ろくなことがない。 「ほら、これなんですけど」 げんなりしながら、小山がこちらへ向けて見せてきた画面を見る。
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