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小山の想像を絶する口の軽さにも驚愕したが、それよりも噂の話に唖然とした。
雪乃に避けられているのはこの写真が出回っているからに違いない。
知らなかった事実に戸惑うも、早く彼女をフォローしてあげたくてたまらなくなり、すぐに携帯のメッセージ画面を出した。
「あ! 課長、まさか本当に別れませんよね?」
小山が手を伸ばし、晴久の携帯を持つ手を掴んだ。
「別れるって何だ」
「だって、高杉課長ってこうやって噂されるの大嫌いじゃないですか。見つけた奴が盗撮したからこんな写真が出回ってるわけだし。こんなことになったら恋人と別れて、静かな暮らしに戻りたいのかなって」
「……そんなわけないだろう」
「良かった! さすがに俺が口滑らせたせいで別れることになったら嫌なんで。課長、彼女さんのことちゃんと好きなんですね」
小山に指摘されたことで、晴久は初めて、噂されていることについて自分が全く気にしていないと気付いた。
女性に追い回されたくなくて徹底的にプライベートを隠しているのに、今は恋人の存在を知られることに何の嫌悪感もない。
雪乃が彼女であると、自分はいつ公にしても構わない。
五年前のあの事件から、こんな気持ちになるのは初めてだった。
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