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晴久はメッセージ画面を出し、迷いなく『写真の件で悩んでいるなら、今夜ちゃんと話そう』と打ち込んで送信する。
すぐに既読になったが、蕎麦を食べている間に返信が来る気配はない。
「小山」
「ん、はいっ」
手早く蕎麦を口に流し込み、晴久は同じく口の中に蕎麦を詰めている小山に言った。
「その写真の恋人とは先週から付き合っている。どこの誰かは言わないが、俺はちゃんと好きだし、真剣だ。誰かに聞かれたらそう答えろ」
「課長……!」
「じゃあもう出るぞ。悪いが今日はあまり残業したくない」
「了解ですっ」
仕事のできる上司のステータスに美人の恋人と真剣交際というポイントが追加されたことで、小山はさらに羨望の眼差しを向けて付いていく。
「俺も彼女とは真剣交際ですよ。そのうちプロポーズします!」
己を省みた小山は、会計中の晴久にそう言った。
晴久は「お似合いだと思うぞ」と祝福と皮肉を込めた言葉を返し、店を出た。
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