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晴久と会わなくなってまだ二日だというのに、ひとりの部屋はひどく寂しく、怖かった。
雪乃はソファの背にかけてあったブランケットにくるまってみるが、それは晴久に抱き締められる安心感には程遠い。
「……晴久さん……」
彼との別れが近いと思うと、涙が止まらなくなった。
電車で停電をしたときのような過呼吸がかすかに甦ってくる。
雪乃は、毎晩抱き締めてくれる晴久の腕を思い出し、ギュッと自分の体を閉じ込めた。
優しく触れてくれた晴久の手を忘れることができない。
今まで会った男性とは違う、出会ってからずっと誠実でいてくれた彼との恋を終わりにしたくなかった。
そのとき。ピロン、という小さな音とともに、携帯のメッセージが更新された。
携帯をブランケットの中に引っ張り込み、画面を確認する。
『雪乃』
二文字のみのメッセージだが、それは雪乃の脳内に、晴久の甘い声で再生される。
すぐにじわりと瞳が滲み、胸がバクバクと跳ね出した。
いくら雪乃が避けようと、晴久は止まってはくれないのだ。
別れを切り出される。そう覚悟をしていたものの、それが直前まで迫ろうとしていると身動きが取れなくなった。
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