「大丈夫ですか」

11/21
前へ
/128ページ
次へ
──すると突然、頭上の電気が消えた。 頭上だけではない。席の上に一列に並んでいる車内灯は、車体の奥へ向かって次々に消えていく。 チチチと音を立てて全ての車内灯が消えると、車内が暗闇になった。 その瞬間、電車が大きく減速し始める。 (……な、にっ……!?) 雪乃は座ったまま、膝の上で鞄の紐を握りしめた。 一瞬だけ車内は窓の外の暗闇と同化し、電車は完全に停止する。 悲鳴を出しそうになったが、その前に出入口付近の予備電灯がぽっかりと点灯した。 人の輪郭だけがかすかに分かるくらいに薄暗く照らされる。 車輪の音、空調の音はいっさい消え去り、感じたことのない静寂だけがあたりを包んだ。 「……はっ……はっ……」 あまりの事態に雪乃は過呼吸に陥った。 周囲に悟られないよう手で口を押さえるが、代わりに鼻の呼吸がパニックで震え、肩やら腹筋やらがガタガタと揺れる。 『お知らせ致します。この電車は停電により一時停車しております。ただいま原因を調査中ですので、座ったままでお待ちください。なお、線路上は危険ですので、ドアの開閉、線路への降車はなさらないようお願いします』 (停電……!?)
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6335人が本棚に入れています
本棚に追加