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耳元で囁かれたことで雪乃の身体は力が抜け、見られていた恥ずかしさも同時に襲ってくる。
しぼんでいくように彼の胸に収まると、雪乃は赤い顔をしながら「会社なのに……」と一応の忠告をした。
「鍵をかけたから大丈夫」
「ふたりで出てきたら怪しまれますっ」
「昼休憩を取っていたと言えば良い」
画期的な言い訳を提案され、雪乃は徐々に大人しくなっていく。
壁に背をつけた晴久は雪乃を迎え入れ、甘くキスをした。
「晴久さん……」
名前を呼ばれるとさらに煽られ、キスは一層激しくなった。
キスを止めずに、晴久は話し出す。
「決め手はタイミングだっけ?」
「あ……それは……」
「俺も雪乃との出会いは運命的だったと思っているよ。でも雪乃じゃなくても良かったかというと、そんなわけない」
「……そうなんですか?」
「そうだよ。……でも、ほとんど岩瀬さんに先に言われちゃったけどな」
雪乃を誉めちぎって去っていった嵐のような岩瀬を思い出し、ふたりはキスの隙間で笑みをこぼした。
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