6326人が本棚に入れています
本棚に追加
/128ページ
◇◇◇
土曜の夜、ふたりはホテルの展望ラウンジにいた。
夜景を眺めながらディナー。ワイングラスを傾け、ゆっくりとコース料理を楽しんでいる。
今日で付き合って一ヶ月。
付き合うのが初めてである雪乃のために、晴久は些細な記念日も祝う心がけをしている。
ドレスアップした美男美女にホテル内の誰もが振り返るが、本人達は完全にふたりの世界。
最後のデザートの盛り合わせをスプーンで掬いながら、雪乃はキラキラとした瞳を瞬かせた。
「晴久さん。私、皆子さんっていう仲良くしてくださっている先輩がいるんですけど」
「……うん?」
「さっきメッセージが来て。今日、彼氏さんにプロポーズされたんですって」
晴久は食後のコーヒーを飲みながら、だから最近小山の様子がおかしかったのかと納得した。
ついにやったな、と後輩を思い笑みを落とす。
「どんなだったって?」
「いつも居酒屋に行くのに、今日は高級なホテルのディナーに誘われて。おかしいなーと思っていたら、指輪を渡されてプロポーズされたんですって。でも、ふふふ、彼氏さんが指輪をはめようとしてくれたら、手が震えて、紅茶の中に落としちゃったみたいです」
「ははは」
最初のコメントを投稿しよう!