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ふたりで小さく笑った後、雪乃はテーブルに目を戻した。
今夜はこちらも高級ホテルのディナー。雪乃はちょうど、食後の紅茶のティーカップを持っていた。
目の前の晴久は、じっとこちらを見ている。
「……晴久さん?」
彼の余裕のある瞳に囚われながら困惑している雪乃に、晴久はフッと笑った。
「今夜は、俺はプロポーズじゃないよ。ごめんね」
「え! あ! やだ、そんな意味で言ったんじゃありません……」
「知ってる」
まだ付き合って一ヶ月なのだから雪乃も期待をしていたわけではないが、するつもりはないと断言されると心に刺さるものがあった。
少しぎこちなく、紅茶をすする。
そんな分かりやすい彼女の様子に気付いた晴久は、可愛くて口元が緩みながら、フォローを入れた。
「まだもう少し、俺のことを知ってもらわないと。雪乃には全部知ってもらいたいからね」
「……私も。晴久さんのこと全部知りたいです」
ワインの酔いでうっとりとする雪乃に、晴久は本当はすぐにでも自分のものにしたい、と告げそうになるも、そこはグッと堪えた。
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