「俺の家に来ませんか」

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「あの、ここです」 雪乃はクリーム色の三階建てアパートを指差した。 間取りはどれもワンルーム、新しくはないものの、オートロックがついている。 施錠されたエントランスを見た晴久は、これなら本当に安全だろうと無事役目を終えたことに安堵した。 「本当に、ありがとうございました」 雪乃は改まり、晴久と向き合って頭を下げた。 「いえ。気にしないで下さい。俺の家もこの先なので、帰り道でしたから」 顔を上げた雪乃は、晴久の澄んだ目を見ながら、家に入らず立っているままでいた。 彼女の目は泳いでおり、マスクの下では顔が赤くなっている。 晴久が待っているのに、いつまでもその場でモジモジと手を擦り合わせて動こうとしない。 晴久が「細川さん?」と尋ねると、雪乃は勇気を振り絞り、鞄から携帯電話を出した。 「……高杉さんの連絡先を教えてもらうことはできないでしょうか……」
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